「瞳を閉じると浮かぶ心の風景」― 暮らしに寄り添うインテリアファブリック ―

トレファトレファに新たに参画したデザイナー、ムラタトモコさん。

イラストレーター/テキスタイルデザイナーとして、幅広い分野で活躍されています。「心の風景」をテーマに展開するデザインについて、込めた想いや制作におけるこだわりなどを、じっくりと伺いました。

トレファトレファのデザインへの想いと環境性に共感

― トレファトレファに参画いただいた理由についてお聞かせください。

ムラタトモコさん(以下、ムラタ):トレファトレファが環境に配慮したものづくりを行っていること、「ファブリックデザインで暮らしを豊かに」というテーマをもっていることが大きかったです。

私も活動テーマとして、自分の図案や絵で暮らしの中に小さな幸せを感じてもらえたらうれしいと思っているので、ファブリックデザインで暮らしを豊かにするというトレファトレファのコンセプトにも自分との共通点を感じました。

また、テキスタイルは環境負荷が高い産業といわれていますが、トレファトレファではデジタルプリントのため汚水を発生させず、余剰在庫をもたないなど、環境のことを考えて生産しているところに共感しました。

ムラタトモコ画像2

 心に浮かぶ日常の風景をインテリアに

― 今回のデザインのテーマは「心の風景」ですが、どのような意味がこめられているのでしょうか?

 ムラタ:瞳を閉じて暮らしの風景を思い浮かべると、力強く生きる新芽や植物、心地よいそよ風や太陽の光の粒など、普段気にとめていなかったような日常の中の情景が思い出されます。そんな心情風景は、インテリアデザインと相性がいいのではないかと思いました。部屋の中にそんな「心の風景」があると、気持ちが和み、暮らしの楽しさを感じることができる気がします。

ムラタトモコ画像3― Sprout, Light dots, Soil, Sun light, Rippleと5つのデザインがありますが、いずれも自然を感じるような日常の中で心に残る風景ですね。ムラタさんご自身が、特に思い入れがあるデザインはどちらになりますか?

 ムラタ:Rippleです。こちらは瀬戸内海の波の様子を描きました。瀬戸内海は夫の故郷であり、私にとっても第二の故郷と呼べる場所なのですが、海では穏やかな波がずっと続いていて、空と水面が鏡みたいに互いを映しあって、その様子がすごく美しくて。観ているときも、あとから思い出しても、本当にきれいなんです。

 こういう心にずっと残るような風景がインテリアに落としこまれたらとても素敵なのでは、と思いました。それぞれの人がもつ海の思い出をすぐにつながれるきっかけになれるかもしれないし、日常と非日常をつなぐものになるかもしれない。そんなことを考えながら制作したので、Rippleは描いていてとても楽しかったです。

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手描きの味わいと部屋になじむことを大切に

― デザイン上、こだわったことはどのようなことですか?

ムラタ:色と手描き感です。今回のデザインは幾何学的な模様も多いのですが、手描きだと線が直線になりすぎず、輪郭にかすれやゆらぎ、にじみが出ます。そういう手描きならではの温かみや味わいを大切にしました。また、カーテンやテーブルクロスなど広い面積を占めるものは、離れて見た時に一枚の絵としても感じてもらえること、そして主張しすぎず部屋になじむ存在になれることを意識しながら描きました。

 ― たしかに全体的に柔らかくて、つくりこみすぎていない感じがありますよね。イラストの風合いもすごくきれいにデフォルトされつつ一貫性があって、とてもムラタさんらしいデザインになっているなと感じました。

部屋に自然をもたらし、元気や安らぎを

ムラタ:これまでテキスタイルデザインはアパレルが中心だったので、インテリアファブリックならではのポイントがいくつもありました。大きな面積で使うということに加えて、組み合わせて使うことを考えてデザインするのも新しい挑戦でした。

カーテンとクッションというようにいくつかのデザインや色と組み合わせて使うときに、製品同士が調和するのか、お部屋全体とはどうか、ということを考えながらいくつもの柄と色合いを創っていくのは、難しかったです。今回グリーン系と黄色系の色がありますが、そのニュアンスにはこだわりました。

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 グリーンは元気な植物の感じをイメージして、植物をお部屋に置けない人でもカーテンやクッションで取り入れることで、お部屋に植物の生命感を与えることができたらいいなと思って制作しました。

 黄色は、日の光や明るさを意識しました。以前一人暮らしをしていた時の部屋にはあまり日が入らなかったのですが、その時に黄色のカーテンを使っていて、その明るさに気持ちが助けられていたんです。なので、この黄色も部屋に加わることで全体を明るくしてくれる存在になることを目指しました。マスタードっぽい色にしたのは、明るさを加えつつも、和室にも洋室にも合う、部屋を選ばないものにしたかったからです。

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心の風景として暮らしに寄り添うファブリック

― 柄の大きさや密度感についても、カーテン、テーブルクロス、クッションとそれぞれ大きさが変わっても違和感のないものに仕上がっていますよね。では、最後にみなさんへのメッセージをお願いします。

 ムラタ:カーテンをはじめとするインテリアファブリックは、暮らしに寄り添う存在だとおもいます。目を引く存在というよりは、家に帰ってきた時、部屋で過ごす時に、ふと目に入ると元気がでたり、心が安らいだりするもの。私のデザインしたインテリアファブリックが、みなさんの心の風景になって暮らしに寄り添うことができたら、とてもうれしいです。

ムラタトモコさんポートレイト

 ムラタトモコ:イラストレーター/テキスタイルデザイナー

「心にそっと、小さな幸せを」をテーマに、暮らしの中で心に留まった風景を図案に落とし込み、テキスタイルやドローイングで表現。オリジナルテキスタイルやグラフィック制作、イラストレーション連載や企業コラボレーションデザインを手がける。

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